紀行
上田紬〜染織家 小山憲市・思い描く「緋-あけ」を求めて〜
草木染め染料は和多く存在する。
代表的なものとなると紅花、紫根、カリヤス、コチニール、ウコンが挙げられるが。色素を抽出できる植物であれば、概ねどの植物でも草木染めは可能である。
しかし、草木染めで思い描く色に辿り着くのは難しい。発色そして濃度。化学染料を用いれば容易な染色も天然原料の草木染めではそうはいかない。原料をどのくらい煮出すか、時間、量、そして何で媒染するか。分量や温度の僅かな違いで染め上がる色が異なる。思い通りにいかない部分が多く、手間が掛かるのが天然原料を用いた草木染めの特徴でもある。
2024年2月。当店では6度目となる個展を開催頂く、上田紬染織家 小山憲市氏。
氏は地元長野で採取可能な原料をはじめ、様々な草木染めを試み、思い描く色風合いの「紬」の制作を追求している。
そんな小山氏に1年ほど前から2024年2月の個展に向けて作品の展開を依頼している草木染めがある。
それは「茜染め」。
その名の通り根が赤い事から「あかね」とされたと言われる茜は、日本で最も歴史が古い赤系の染料である。
茜は大きく分けて3種。西洋茜、インド茜、そして日本茜。しかし同じ赤系の染料でもそれぞれ発色が異なる。それぞれの特徴を捉え、思い描く「あか」の表現に取り組んで頂いているが、今回の特集「紀行」では日本茜の染色の取り組みをご紹介します。
題して<上田紬〜染織家 小山憲市・思い描く「緋」を求めて〜>
*「緋 - あけ」は最も明るい茜色を指す緋色の和訓
どうぞご覧ください。
<原料となる日本茜の根の部分。赤い粉が塗されたような独特の質感>
<一晩水に漬け色素を抽出した後の状態。海藻の”ふのり”にも見える>
<日本茜から抽出した染料。水に対しての分量で濃度も変化する。透明感のある茜色がとても美しい>
<染料を釜に入れ、蒸気で適温まで温める>
<今回染める糸は①精練を終えた白糸(左) ②既に一度茜染をした糸(右)の2種類>
<染料に漬け込む>
<徐々に染色されていく>
<4分程時間が経過した状態。外気に触れる事で微妙に色が落ち着いていく様子が伺える>
<染料から取り出ししっかり絞る>
<一旦染色終了。ここから媒染に>
<今回はアルミで媒染。媒染剤がない時代は藁を燃やした灰を使っていた。昔の人は藁の灰にアルミ成分が含まれている事を知っていた>
<グレーがかった色に少しずつ変化していく>
<媒染終了。1度目の染色と媒染でここまでの色合いに。染工場に差し込む光に照らされた糸がとても美しい>
<日本茜、インド茜、西洋茜で染色をした糸と今回染めた糸を比較してみる>
<日本茜、インド茜、西洋茜で染色をした糸と今回染めた糸を比較してみる>
<染色を終え乾かした糸は機場で整理を待つ>
<絹糸の種類でも発色は異なる。生糸、紬糸、玉糸の質感の違いなど小山氏に説明を頂く店主>
<小山氏がこだわり選び抜いた絹糸。糸の風合いも柄の一つである、と小山氏は語る>
<整理を待つ糸。糸巻きで並ぶ姿が愛らしい>
<機場を行き交う糸。この何気ない風景がなんとも美しく映る>
<今回の取り組みで既に織り上がってた日本茜で染めた訪問着。日本茜ならではの柔らかな色調>
<目にも心にも響く美しさ。惜しげなく手間暇をかけて作られた最高に贅沢な一枚>
・・・
原料、媒染、糸、、、様々な要素条件が一つになり辿り着く理想の色。染織家 小山憲市が思い描く「緋」を求める染織の旅はこれからも続く。
上田紬 染織家 - 小山憲市氏
<小山憲市 略歴>
1957年 長野県上田市に生まれる
1991年 全日本新人染織展京都商工会議所会頭賞
1991年 全日本新人染織展大賞 文部大臣奨励賞
1993年 長野県染色作家展県知事賞
1994年 第一美術展新人賞
など 受賞歴多数。
深いこだわりにより洗練された感性から織り上げられる「紬」は唯一無二。
・・・
今回特集した茜染の作品群をはじめ、小山氏の作品をご紹介する個展「小山憲市染織展 - 緋」を開催致します。
詳細は以下リンクより。
併せてご覧下さい。
・2023年 特集「紀行」
小山憲市 × 荒井呉服店
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