お薦めの逸品
未来への希望と共に〜手挿京友禅男児初着 -『宝船』
京友禅工房「高橋啓」に制作を依頼した男児初着を"手挿京友禅"の制作工程と共にご紹介します。
初宮詣りで御子息が御召しになる"初着"そして、七五三"五歳の御祝着"は健やかな成長を祈願するという通過儀礼の性質から、男性向けの着物ながら縁起を担ぐ柄が染め描かれているものが主流となっています。
代表的な柄としては「鷹」や「兜」が挙げられますが、例えば鷹には遠くまでを見渡せる眼力から”先見の明・本質を見抜く”、そして力強く獲物を捕らえる爪から”運を掴む・幸せを掴む”など、柄に意味合いが込められています。
色柄雰囲気はもちろんの事、そうした柄に込められた意味合いも御祝着選びで重要視される要素となっています。
本作はそれらの柄の中から無数の波を意匠化した「青海波」、そしてそこに浮かぶ「宝船」を染め描いたものです。
青海波には広い海に無限に広がる波に「未来永劫に続く幸せを願う」という想いが込められており、雅楽「青海波」の装束に用いられていた事からこの名が付いたと言われています。余談ですが、『源氏物語』の紅葉賀の巻で青海波を舞う源氏の君が美しく描かれており、見どころの一つとされております。
さて、話は戻して「宝船」です。様々な宝物を積み込んだ帆船を描いた宝船は縁起物の代表格。室町時代には良い初夢を見るために1月2日には枕の下に宝船の絵を敷く風習があったそうです。当初は米や宝物を積む帆船でしたが江戸時代には七福神も共に描かれるなどより華やかでおめでたい意匠へと変化もありました。本作においては宝尽文を重ね描いたものにしております。
私ども荒井呉服店がお子様がお召しになられる着物に関して特に意識しているのは男児女児問わず「可愛らしさ」です。男児の着物となると鷹、兜など勇壮な印象の柄もありますが、そうしたものの中にも可愛らしさが表れているものを意識して扱っております。柄、構図、大きさ、丸み、そして配色。様々な要素を重ねて表現される伝統美の中にある「可愛らしさ」を頭の片隅に置きご覧きます事で、一層この初着の魅力に触れて頂けるのではないかと思っております。
<地色と一部の彩色を終えた背面部。柄を模るブルーの縁は”糸目”。本作においては”ゴム糸目”を使用>
<彩色の番号>
<色見本。作品毎に友禅師が染料を調合して色を作る>
<工房の代表曰く、友禅師それぞれで色に特徴が顕れるので、図案によって任せる友禅師を選定するとの事>
<伸子針で生地を張り広げ、いよいよ友禅の工程へ>
この様に手挿友禅が進みます。
友禅を終えた後、染料を定着させる為の工程を経て、刺繍や金彩など所謂”化粧”の工程へと進みます。
京友禅はほとんどが分業で行われており、友禅を含めた工程数は作品によって少なく意味積もっても18程ございます。各工程に熟練の職人がおり、その職人たちの手仕事を経て、「手挿京友禅」という染物は完成致します。
子を授かった御礼と健やかな成長を神様に祈願する「初宮参り」。
その神前に立つ際のお子様の正装がこの「初着 - 産着」です。
この大切な節目のお祝いを美しく彩り、お子様はもちろんご家族皆様にとっても大切な記念にして頂きたいという想いを込めてご用意した荒井呉服店の男児特選初着『高橋啓謹製 男児初着 - 宝船』。
ご家族様の人生の1ページを彩るお召し物の制作に携わる私どもも、まだ見ぬご子息の大切な未来が明るく照らされたものになりますように、大切なご子息の為にご用意される親御様の想いに寄り添えればとこの初着をご用意致しました。
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